LTVを単一の平均値として扱うと、「今の顧客が優良かどうか」の判断を誤りやすい。数年前に獲得した顧客と直近の顧客では、獲得経路も商談の質も異なるためだ。同じ物差しで比べても意味がない。獲得時期ごとに顧客群(コーホート)を分け、それぞれのLTV推移を時系列で追う分析は、平均値の裏に隠れた傾向を掘り起こす手段として使われている。

なぜ平均LTVでは不十分なのか

全顧客の平均LTVは、既存の優良顧客に引きずられて実態より高く見えることがある。見た目の数字が実力とは限らない。一方で直近獲得層のLTVがまだ立ち上がっていないだけの場合、平均値だけを見ると成長鈍化と誤認しかねない。早合点は禁物だ。コーホート単位に分解することで、「新しい顧客群の育ち方」が過去と比べて良いのか悪いのかを判断できるようになる。

具体的な分析方法

獲得月(または四半期)ごとに顧客をグループ化し、経過月数ごとの累積売上・継続率を並べるのが基本形だ。

獲得月経過3ヶ月経過6ヶ月経過12ヶ月
1月獲得群目安30万円目安55万円目安90万円
4月獲得群目安28万円目安58万円集計中
7月獲得群目安32万円集計中集計中
  • 獲得経路(問い合わせ・紹介・アウトバウンドなど)別にコーホートを分けると精度が上がる
  • 解約・休眠の定義を統一しておく
  • 直近コーホートは期間が短く数値が未成熟な点を織り込む

ポイント:新しいコーホートほど数値が低く見えるのは自然な現象であり、単純な優劣比較は避けたい。

営業代行活用における応用

営業代行を通じて獲得した顧客群と自社チャネル獲得の顧客群を別コーホートとして並走させると、獲得経路ごとの質の違いが数値として見えてくる。短期の受注率だけでは判断できない。実は長期的なLTVが高いチャネルを見誤る可能性もあるため、一定期間の追跡は欠かせない。

注意点・限界

コーホート分析は時間の経過が前提となるため、即効性のある改善指標ではない。近道はない。また外部環境の変化(景気・競合参入など)がコーホート間の差に混ざり込む余地もあり、純粋な獲得施策の効果とは言い切れない点には注意が必要だろう。

実践シーンとよくある失敗パターン

BtoB SaaS企業の場合、獲得経路別にコーホートを分けて分析した結果、紹介経由の顧客群は初期のLTV成長が緩やかでも、12ヶ月時点では広告経由の顧客群を上回る傾向が見えてきた、というケースがある。小さな発見ではない。この気づきがあったことで、短期の受注件数だけでなく紹介施策への投資配分を見直す判断につながった例も見られる。中小企業向けの継続課金サービスでは、営業代行経由で獲得した顧客群を別コーホートとして追跡した結果、初期の受注スピードは早いが、6ヶ月以降の継続率が自社チャネルよりやや低い傾向が判明し、フォロー体制の見直しにつながったという声もある。

よくある失敗パターンとして、直近のコーホートと過去のコーホートを単純比較し、「最近獲得した顧客群は成長が悪い」と早計に結論づけてしまうことがある。時間が経てば育つだけかもしれない。直近のコーホートはまだ経過期間が短いだけで、過去のコーホートと同水準に育つ可能性は十分にある。また、解約・休眠した顧客をコーホートから除外して集計してしまうミスも多い。数字が甘くなる。実態より良い数値に見えてしまう。

実践のコツとして、以下のチェックポイントを確認しておきたい。

  • コーホート間の比較は必ず同じ経過月数同士で行う(直近×過去の絶対値比較は避ける)
  • 解約・休眠顧客もコーホートに残し、離脱として扱う
  • 獲得経路別の傾向が見えたら、短期的な受注件数だけでなく投資配分の見直しにつなげる

よくある質問

Q. コーホートはどの単位で区切るのが良いか A. 商談量にもよるが、月次または四半期での区切りが扱いやすい。

Q. 何ヶ月分のデータがあれば分析可能か A. 最低でも12ヶ月分の継続データがあると傾向が見えやすい。

Q. 解約顧客もコーホートに残すべきか A. 残した上で「離脱」として扱うのが一般的で、除外すると数値が実態より良く見えてしまう。

Q. LTVの計算期間はどう決めるべきか A. 契約更新サイクルや平均継続期間を踏まえ、自社の実態に合わせて設定するのが現実的だ。

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