新規開拓と既存顧客深耕は求められるスキルも時間軸も異なるにもかかわらず、同一のKPI(受注件数や売上額など)で評価している組織は少なくない。この画一的な評価が、既存顧客の深耕活動を後回しにさせる一因になりうる。

ハンターとファーマーの評価軸を分ける

新規開拓では商談化率やアポ獲得数といった短期の活動量指標が機能しやすい一方、既存深耕ではアップセル率や解約率、顧客満足度といった中長期指標がなじむ。役割を混在させたまま評価すると、どちらの活動も中途半端になりやすい。

KPI設計の対比例

区分主なKPI例
ハンター(新規)アポ獲得数・商談化率・新規受注額
ファーマー(既存)継続率・アップセル額・NPS等の満足度指標
営業組織
├─ ハンター(新規開拓) → アポ獲得数・商談化率(四半期評価)
└─ ファーマー(既存深耕) → 継続率・アップセル額・NPS(半期〜1年評価)
  • 役割を明確に分けられない小規模組織では比重配分で対応する
  • 評価期間もハンターは短期(四半期単位)、ファーマーはやや長期(半期から1年単位)が適する
  • 情報連携が薄れないよう案件引き継ぎのルールを設ける

ポイント:役割分離は組織の断絶を生みやすいため、顧客情報の引き継ぎプロセスを制度としてセットで設計する必要がある。

分業化を進める際は、組織規模や商材の特性を踏まえた段階的な移行が現実的だ。いきなり完全分業にすると、引き継ぎ時の顧客体験が損なわれるリスクもある。

分業移行でつまずきやすいポイント

ハンターとファーマーの評価軸を分ける発想自体は多くの組織で理解されていても、実際に移行する段階でいくつかの摩擦が生じやすい。

移行期に起きやすい問題

  • 担当替えのタイミングで顧客との関係性が一時的に薄れる
  • ハンター出身のメンバーがファーマー的な地道な活動に価値を見出しにくい
  • 評価制度の変更が先行し、現場の役割理解が追いつかない

こうした摩擦は、制度だけを変えて現場への説明を省略すると起きやすい。評価軸の変更理由や、それぞれの役割に何を期待しているのかを丁寧に伝える工程が欠かせない。

引き継ぎ設計の工夫

引き継ぎ場面工夫の例
新規から既存への切り替え時商談履歴や顧客の懸念事項を記録に残し同席の場を設ける
ファーマーからの情報還元既存顧客の声を新規開拓側にも定期共有する
評価制度の移行期一定期間は旧新両方の指標を並行して観察する

段階的な移行と丁寧な引き継ぎ設計をセットで行えば、分業化のメリットを活かしながら顧客体験の質を保ちやすくなる。

兼務からの移行を検討する目安

組織規模が小さいうちは一人が両方の役割を兼務することも珍しくないが、案件数や顧客数が増えてくると、どちらかの活動が後回しにされやすくなる。新規開拓の商談化率と既存顧客のフォロー頻度を定点観測し、前月比で2〜3割程度の落ち込みが継続するようであれば、役割分離を検討する一つの目安になる。

よくある質問

Q. 分業化で顧客対応の一貫性は保てるか。 A. 引き継ぎ時の情報連携ルールを明確にすれば一定担保できる。商談履歴と顧客の懸念事項を記録に残し、切り替え時に同席の場を設けるのが基本だ。

Q. ファーマーのKPIに売上を含めるべきか。 A. 含めても良いが、満足度や継続率など先行指標との併用が望ましい。

Q. 人材配置の適性はどう見極めるか。 A. 過去の行動特性や本人の志向性を踏まえた面談が現実的だ。

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