一つの商品やサービスを導入してもらった顧客に、関連する別の商品を提案するクロスセルは、アップセルと並んで既存顧客からの売上拡大策として位置づけられる。ただし設計を誤ると、顧客にとって的外れな提案になりやすい。刺さらなければ、ただの押し売りだ。ここではクロスセル提案の設計と、営業代行を組み込む際の実践ポイントを整理する。
クロスセルは「組み合わせの必然性」が肝
組み合わせに必然性はあるか。クロスセル提案が響くかどうかは、既存商品との組み合わせに必然性があるかどうかにかかっている。関連性の薄い商品を並べて紹介しても、顧客には唐突な売り込みとしか受け取られないだろう。
ポイント:クロスセルの設計は「顧客の業務フロー」を起点に考えると精度が上がりやすい。
例えば、ある業務システムを導入している顧客に対し、その業務の前後工程を効率化するツールを提案する、といった具合に、顧客の業務全体を俯瞰した設計が求められる。
新機能・新商品というフックが効く理由
クロスセルはどうしても「売り込み」の色が出やすく、提案しづらいと感じる営業担当は多い。しかし実務上は、新機能や新商品のリリースというフックを使ったコールは効果的だ。既存顧客への連絡というと身構えられがちだが、「新しくこういう機能が加わりました」というお知らせは、売り込みというより情報提供として受け取られやすく、話を聞いてもらえる糸口になりやすい。
実際、ラクスルBPOが営業代行事業を立ち上げた際も、ラクスルの既存顧客に対してメールと電話でのアプローチを組み合わせ、新サービスとして認知を広げるところから顧客を獲得してきたという経緯がある。ゼロからの新規開拓ではなく、すでに接点のある顧客基盤に新しい商品・サービスの情報を届けるという動き方自体が、クロスセルの実践例そのものだったと言える。
設計のステップ
クロスセル提案を組み立てる際は、以下のような順序で検討すると整理しやすい。
- 既存商品の利用シーンと前後工程を洗い出す
- 前後工程に課題が生じやすい顧客層を特定する
- 課題解決に資する自社商品・サービスを組み合わせる
- 提案トークとタイミングを設計する
① 既存商品の利用シーン・前後工程を洗い出す
↓
② 前後工程に課題が出やすい顧客層を特定
↓
③ 課題解決に資する商品・サービスを組み合わせる
↓
④ 提案トークとタイミングを設計する
この設計段階は自社の商品知識と顧客理解が不可欠なため、社内で行うべき部分だ。一方、設計が固まった後の実行フェーズでは、営業代行の活用余地が広がる。
営業代行を組み込む実行フェーズ
設計済みのクロスセルシナリオに沿って、対象顧客への架電やアポ設定を営業代行に依頼する企業は多い。この際、次のような役割分担が現実的になる。
- 自社:提案シナリオの設計、対象顧客リストの抽出
- 営業代行:リストへの架電、関心度のヒアリング、アポ設定
- 自社:具体的な提案内容の説明、クロージング
自社 営業代行 自社
提案シナリオ設計 → リストへ架電 → 提案内容の説明
対象顧客リスト抽出 関心度ヒアリング クロージング
アポ設定
セットで渡す。それが精度を分ける。営業代行にはシナリオと想定問答をセットで渡すことで、顧客の反応を一定の精度で拾い上げてもらいやすくなる。
反応データを次の設計に活かす
クロスセル提案は一度で完成するものではなく、反応データをもとに継続的に見直すものだ。どの組み合わせで関心を示す顧客が多かったか、どのタイミングで断られやすいかといった情報を営業代行から吸い上げ、次のシナリオ設計に反映させる仕組みを作っておきたい。
実践シーンとよくある失敗パターン
BtoB SaaS企業の場合、既存システムの利用状況から前後工程の課題を推測し、関連ツールを提案するシナリオを設計したところ、唐突な売り込みという印象を避けながら関心を引き出せたという例がある。一方、中小製造業向け営業の場面では、既存商品との関連性が薄い商品まで一律にクロスセル対象としてリストアップしてしまい、架電先の多くから「うちには関係ない」と断られる結果になったという失敗も起こりうる。
よくある失敗パターンとして、以下が挙げられる。
- 既存商品との関連性を検証せず、売りたい商品を優先してクロスセル対象を選んでしまう
- 顧客の利用状況を確認しないまま、画一的なタイミングで一斉に提案してしまう
- 営業代行にシナリオだけを渡し、想定される反論への対応方針を共有しないまま実行に移してしまう
- 新機能・新商品というフックを使わず、既存商品の御用聞きの延長で連絡してしまい、話を聞いてもらう糸口を作れない
実践のチェックポイントは次の通りだ。
- クロスセル対象の組み合わせは、顧客の業務フローに照らして必然性があるか
- 提案のタイミングは、顧客の利用状況の変化に紐づいているか
- 新機能・新商品のリリースなど、情報提供として自然に受け取ってもらえるフックを用意できているか
- 営業代行に渡すシナリオには、想定問答や断られた際の対応方針まで含まれているか
よくある質問
Q. クロスセルとアップセルはどう使い分ければよいですか。 A. アップセルは同一商品の上位版、クロスセルは関連する別商品の提案という違いで整理すると分かりやすい。
Q. どのくらいの頻度でクロスセル提案をしてよいものですか。 A. 頻度に明確な基準はないが、顧客の利用状況に変化があったタイミングを目安にする考え方がある。
Q. 反応が悪かった場合、シナリオはどう見直せばよいですか。 A. 断られた理由や反応の薄かったポイントを営業代行から詳しくヒアリングし、組み合わせやトークを調整する方法が有効だ。
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